本人請求(戸籍法10条1項)
戸籍に記載されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。
第3者請求(戸籍法10条の2第1項第1号、第3号)
自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合、権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由を明らかにしてこれをしなければならない。戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合、戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由を明らかにしてこれをしなければならない。
職務上請求(戸籍法10条の2第3項)
第一項の規定にかかわらず、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士又は行政書士は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
(例)当該業務の種類:遺産分割協議書原案作成、遺言公正証書原案作成、相続財産目録作成、相続
関係図作成
当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称
当該依頼者についての第一項各号に定める事項
(自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合)
権利又は義務の発生原因及び内容:○年○月○日依頼書夫 ○山○雄死亡による相続開始
権利を行使するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由:法定相続人を特定するため
市町村長は、当該市町村が備える住民基本台帳について、特定事務受任者から、受任している事件又は事務の依頼者が同項各号に掲げる者に該当することを理由として、同項に規定する住民票の写し又は住民票記載事項証明書が必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該特定事務受任者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる。
申出者は、第四項第四号に掲げる利用の目的を達成するため、基礎証明事項のほか基礎証明事項以外の事項(第七条第八号の二及び第十三号に掲げる事項を除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部が表示された住民票の写し又は基礎証明事項のほか基礎証明事項以外の事項の全部若しくは一部を記載した住民票記載事項証明書が必要である場合には、第一項又は第二項の申出をする際に、その旨を市町村長に申し出ることができる。
(例)当該業務の種類:遺産分割協議書原案作成
権利又は義務の発生原因及び内容:○年○月○日依頼書夫 ○山○雄死亡による相続開始
住民票の写しの利用目的:法定相続人を特定するにあたり、被相続人○○の本籍の記載を確認する必
要があるため
第十条の三第1項 現に請求の任に当たつている者は、当該請求の任に当たつている者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を明らかにしなければならない。
第2項 現に請求の任に当たつている者が、当該請求をする者の代理人であるときその他請求者と異なる者であるときは、当該請求の任に当たつている者は、市町村長に対し、法務省令で定める方法により、請求者の依頼又は法令の規定により当該請求の任に当たるものであることを明らかにする書面を提供しなければならない。
施行規則第十一条の二第1項 戸籍法第十条の三第一項 の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる方法とする。
一 戸籍法第十条第一項(本人等請求) 、第十条の二第一項又は第二項の請求をする場合(第三者請求)には、運転免許証等、国若しくは地方公共団体の機関が発行した身分証明書で写真を貼り付けたもののうち、いずれか一以上の書類を提示する方法
二 戸籍法第十条第一項(本人等請求) 又は第十条の二第一項(第三者請求) の請求をする場合において、前号に掲げる書類を提示することができないときは、イに掲げる書類のいずれか一以上の書類及びロに掲げる書類のいずれか一以上の書類を提示する方法(ロに掲げる書類を提示することができない場合にあつては、イに掲げる書類のいずれか二以上の書類を提示する方法)
三 戸籍法第十条第一項 又は第十条の二第一項 の請求をする場合において、前二号の方法によることができないときは、当該請求を受けた市町村長の管理に係る現に請求の任に当たつている者の戸籍の記載事項について当該市町村長の求めに応じて説明する方法その他の市町村長が現に請求の任に当たつている者を特定するために適当と認める方法
四 戸籍法第十条の二第三項 から第五項 までの請求をする場合(職務上請求)には、第一号に掲げる書類又は弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士若しくは行政書士(行政書士書票)若しくは弁護士等の事務を補助する者であることを証する書類で写真をはり付けたものを提示し、弁護士等の所属する会が発行した戸籍謄本等の交付を請求する書面(以下「統一請求書」という。職務上請求書)に当該弁護士等の職印が押されたものによつて請求する方法
(代理人請求)施行規則第十一条の四第1項 戸籍法第十条の三第二項の法務省令で定める
方法は、委任状、法人の代表者又は支配人の資格を証する書面その他の現に請求の任に当
たつている者に戸籍謄本等の交付の請求をする権限が付与されていることを証する書面を
提供する方法とする。
第2項 前項に掲げる書面で官庁又は公署の作成したものは、その作成後三月以内のものに限る。
請求の範囲、請求の時により以下の場合があります。
その1)請求の範囲が本人、その配偶者、直系尊属若しくは直系卑属の戸籍の場合は、本人の法定代理人として請求します
運転免許証、作成後3ヶ月以内の登記事項証明書を添付します。
その2)請求の範囲が前記以外の者の戸籍の場合は、本人の法定代理人として第3者請求をします
戸籍の記載事項を利用する正当な理由を記載する必要があります。
(例)(戸10条の2第1項3号)又は
(利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由)
運転免許証、作成後3ヶ月以内の登記事項証明書を添付します。
その3)本人死亡後の相続人調査の場合には、元成年後見人として第3者請求をします。
成年被後見人が亡くなった後,元成年後見人は,相続人を調査して,相続人に相続財産を引き渡すことになります。成年被後見人の死亡後は,成年被後見人の法定代理人として戸籍を取得するわけではありません。元成年後見人として第3者請求をします。
戸籍の記載事項を利用する正当な理由を記載する必要があります。
(例)(戸10条の2第1項3号)又は
(利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由)
請求者が後見人であった被後見人・○○○(平成29年10月 ×日死亡)の相続人調査(相続財産引渡しのため)。
運転免許証を添付します。但し閉鎖登記事項証明書を要求される可能性があります。
追記
( 成年後見人が自己の権限で戸籍謄本等を請求することになるので,請求者と現に請求の任に当たっている者は一致しています。したがって,権限確認書面としては,作成後3か月以内の成年後見登記の閉鎖登記事項証明書を提供する必要はありません。しかしながら,市区町村長は,戸籍謄本等の請求があった場合において,請求者が明らかにしなければならない事項が明らかにされていないと認めるときは,当該請求者に対し,必要な説明を求めることができる(戸籍法10条の4)事を根拠として一律に作成後3か月以内の成年後見登記の閉鎖登記事項証明書を要求する役所が多いことも事実です。)
死亡診断書(死体検案書)
医師または歯科医師には、死亡診断書(死体検案書)の作成交付義務があります(医師法第19条第2項、歯科医師法第19条第2項)(厚生労働省HPから死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルをダウンロードすることができます)。
死亡診断書(死体検案書)は①人間の死亡を医学的・法律的に証明する ②我が国の死因統計作成の資料となる という2つの意義を持っています。
医師は、自らの診療管理下にある患者が、生前に診察していた傷病に関連して死亡したと認める場合に死亡診断書を、それ以外の場合には死体検案書を交付します。医師は、死体または妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めるときは、管轄警察署に届け出なければならない(医師法第21条)とされ、捜査機関による検視等の結果も踏まえた上で、死亡診断書もしくは死体検案書を交付します。
医師は自ら診察しないで診断書を交付することができません。
診療中の患者が死亡した場合、死亡に立会えなくとも、死亡後に診察を行い、生前に診療していた傷病に関連する死亡であると判定できる場合には、死亡診断書を交付することができます(医師法第20条本文)。
また、最終の診察後24時間以内に患者が死亡した場合、死亡後に改めて診察を行うことなく「生前に診療していた傷病に関連する死亡であること」が判定できる場合には、死亡後に改めて診察を行うことなく死亡診断書を交付することができます(医師法第20条ただし書)。
死亡届
死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知った日から3箇月以内)に、これをしなければならない(戸籍法第86条第1項)。
次の者は、その順序に従って、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人及び任意後見人も、これをすることができる(戸籍法第87条)。
死亡の届出は、死亡者の本籍地、死亡地又は届出人の住所地、所在地のうちいずれかの市区町村役場に届出ます。死亡地が明らかでないときは死体が最初に発見された地で、汽車その他の交通機関の中で死亡があつたときは死体をその交通機関から降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡があつたときはその船舶が最初に入港した地で、死亡の届出をすることができる(戸籍法第88条第2項)。
戸籍法44条(届出の催告と職権記載)
第3項 前2項の催告をすることができないとき、又は催告をしても届出がない時は、市町村長は、管轄法務局長等の許可を得て、戸籍の記載をすることができる。
先例◆昭32。1.31民事甲一六三号回答
100歳以上の高齢者においては、その者の所在が不明で、かつ、その生死及び所在につき調査の資料を得ることができない場合に限り、戸籍謄本及び附票の写しのみによって職権消除の許可をすることができる。
先例◆平成22.9.6民一-二一九一号通知
120歳以上の高齢者であって死亡の事実を確認できないものに係る戸籍の職権抹消の許可申請書には、120歳以上の高齢者であり、かつ戸籍の附票に住所の記載がない旨を記載し、当該高齢者の現在戸籍及び戸籍の附票の各謄本を添付すれば足りる。
東京都中野区の事例(2010年10月12日 区民委員会資料 区民生活部戸籍住民担当)
戸籍上生存している高齢者への対応について
1.戸籍上生存している高齢者について
戸籍からの死亡による消除は、届出を原則としているが、明治以来の戸籍の変遷や戦争による混乱などにより、消除されずに現存している戸籍がある。
そのほとんどが、死亡の蓋然性が高い高齢者の戸籍となっている。
届出に代わる戸籍簿の整除の方法として、高齢者消除の方法が認められている。
2.高齢者消除と中野区における取組み
(1)従来の方式 (昭和32年の行政実例に基づく)
年齢100歳以上の高齢者について、調査の結果、生死及び所在について資料を得ることができない場合に、法務局長の許可を得て消除の記載を職権で行ってきた。
平成7年度、戸籍電算化の際にはこの方式により、三親等までの親族の調査を行い高齢者消除を行った。その後は、家族の申出により許可を受け消除を行った事例が数件ある。
(2)新たな方式 (平成22年9月6日付 法務省通知)
年齢120歳以上の高齢者で、戸籍の附票に住所の記載がない者は、死亡の蓋然性が高いため、高齢者消除を進めることができることとなった。
ただし、100歳以上120歳未満の高齢者消除は、従来の方法により行う。
市町村長が管轄法務局長の許可を得て、職権で戸籍から消除することが認められています。しかし、これは戸籍整理のための行政措置であって、高齢者消除によって相続の開始の法律上の効果は生じないとされています。